スペキュラマップを実装することで、部分的な質感の違いを表現することができます。今回は、ディテールアップに欠かせないこの機能をどのように実装するのかを解説していきます。記事の最後に、サンプルコードの全容をのせてありますので、手早くシェーダーを利用したい方は、そちらをコピペしてください。
Contents
フォン鏡面反射の実装
スペキュラマップは、フォン鏡面反射の実装部分で用います。スペキュラマップの実装までを含めたフォン鏡面反射の計算は以下のようになります。なお、フラグメントシェーダー外に持ち出すためにinline化してあります。
inline float3 CalcPhongSpecular(float3 pos, float3 normal, float2 uv)
{
float3 ligDirection = normalize(_WorldSpaceLightPos0.xyz); //ディレクショナルライトの向きを取得
fixed3 ligColor = _LightColor0.xyz; //ライトのカラーを取得
float3 toEye = normalize(_WorldSpaceCameraPos - pos); //視線ベクトルを計算
float3 refVec = reflect(-ligDirection, normal); //反射ベクトルを計算
float t = max(0.0f, dot(refVec, toEye)); //反射ベクトルと視線ベクトル
float mask = tex2D(_SpecularTex, uv).r; //スペキュラマップをサンプリングし、mask値を取得
//mask = 1 - mask; //もしスペキュラマップの白黒が逆なら、maskを反転させるする
float3 specularLig = ligColor * mask * pow(t, _SpecularLevel); //ライトカラー、マスク、スペキュラレベルで最終的なカラーを計算
return specularLig;
}
フォン鏡面反射について一行一行説明するには、あまりにも時間がかかりすぎるので、詳しく勉強したい方は、以下の記事をご覧ください。
スペキュラマップでマスクを作る
上のソースコードでスペキュラマップが使われている部分は、以下の部分になります。まずは、tex2Dでスペキュラマップからマスクに使う色をサンプリングします。
float mask = tex2D(_SpecularTex, uv).r; //スペキュラマップをサンプリングし、mask値を取得
//mask = 1 - mask; //もしスペキュラマップの白黒が逆なら、maskを反転させるする
float3 specularLig = ligColor * mask * pow(t, _SpecularLevel); //ライトカラー、マスク、スペキュラレベルで最終的なカラーを計算
return specularLig;
なお、ここで赤色成分であるR成分を抽出しているのは、使用するスペキュラマップが白黒なため、RGBのどの成分を使っても同じためです。使用するテクスチャによっては、mask値に使用するRGB成分を使い分けてください。
スペキュラを絞る
フォン鏡面反射でスペキュラを描画することができますが、計算結果そのままだとハイライトが強すぎるため、いくらか絞りを入れたほうがいいでしょう。絞りを入れるには、スペキュラ値にpowを使います。
前述したソースコードの最後にスペキュラ値を乗算する部分がありますが、ここにpowを差し込むことで絞りをコントロールすることができます。
float3 specularLig = ligColor * mask * pow(t, _SpecularLevel);
ランバート拡散反射の実装
反射を再現するだけならあまり必要ないのですが、自然な見た目でないと反射を視認しにくいため、ランバート拡散反射を実装しておきます。ランバート拡散反射の計算は以下の通りです。ここでも、フラグメントシェーダー外に持ち出すためにinline化してあります。
inline float3 CalcLambertDiffuse(float3 normal)
{
float3 ligDirection = normalize(_WorldSpaceLightPos0.xyz); //ディレクショナルライトの向きを取得
fixed3 ligColor = _LightColor0.xyz; //ライトのカラーを取得
return max(0.0f, dot(normal, ligDirection)) * ligColor; //内積から光が当たっているかどうかを計算する
}
ここでは簡易的にソースコードを乗せただけとなりますが、ランバート拡散反射をもう少し詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事をご覧ください。
シェーダー全体
ここまでのソースコードをすべてまとめると、以下の通りになります。
Shader "CAGraphicsAcademy/SpecularMap"
{
Properties
{
_MainTex ("Main Tex", 2D) = "white" {}
_SpecularTex ("Specular Tex", 2D) = "white" {}
_SpecularLevel("Specular Level", Range(1, 100)) = 0
}
SubShader
{
Tags { "RenderType"="Opaque" }
LOD 100
Pass
{
CGPROGRAM
#pragma vertex vert
#pragma fragment frag
#include "UnityCG.cginc"
#include "Lighting.cginc"
#include "AutoLight.cginc"
struct appdata
{
float4 vertex : POSITION;
float2 uv : TEXCOORD0;
float3 normal : NORMAL;
};
struct v2f
{
float4 pos : SV_POSITION;
float2 uv : TEXCOORD0;
float3 normal : TEXCOORD1;
float3 worldPos : TEXCOORD2;
};
sampler2D _MainTex;
sampler2D _SpecularTex;
float4 _MainTex_ST;
float _SpecularLevel;
v2f vert (appdata v)
{
v2f o;
o.pos = UnityObjectToClipPos(v.vertex); //頂点をMVP行列変換
o.normal = UnityObjectToWorldNormal(v.normal); //モデル座標系の法線をワールド座標系に変換
o.worldPos = mul(unity_ObjectToWorld, v.vertex).xyz; //モデル座標系の頂点をワールド座標系に変換
o.uv = TRANSFORM_TEX(v.uv, _MainTex); //テクスチャスケールとオフセットを加味
return o;
}
float3 CalcLambertDiffuse(float3 normal); //ランバート拡散反射の計算はinline化し、フラグメントシェーダー外に配置
float3 CalcPhongSpecular(float3 pos, float3 normal, float2 uv); //フォン鏡面反射の計算はinline化し、フラグメントシェーダー外に配置
fixed4 frag (v2f i) : SV_Target
{
float3 diffuseLig = CalcLambertDiffuse(i.normal); //ランバート拡散反射を計算
float3 specLig = CalcPhongSpecular(i.worldPos, i.normal, i.uv); //フォン鏡面反射を計算
float3 lig = diffuseLig + specLig; //ランバートとフォンを加算したライティング値
float4 finalColor = tex2D(_MainTex, i.uv); //メインテクスチャから色をサンプリング
finalColor.rgb *= lig; //先に計算したライティング値を乗算
return finalColor;
}
inline float3 CalcLambertDiffuse(float3 normal)
{
float3 ligDirection = normalize(_WorldSpaceLightPos0.xyz); //ディレクショナルライトの向きを取得
fixed3 ligColor = _LightColor0.xyz; //ライトのカラーを取得
return max(0.0f, dot(normal, ligDirection)) * ligColor; //内積から光が当たっているかどうかを計算する
}
inline float3 CalcPhongSpecular(float3 pos, float3 normal, float2 uv)
{
float3 ligDirection = normalize(_WorldSpaceLightPos0.xyz); //ディレクショナルライトの向きを取得
fixed3 ligColor = _LightColor0.xyz; //ライトのカラーを取得
float3 toEye = normalize(_WorldSpaceCameraPos - pos); //視線ベクトルを計算
float3 refVec = reflect(-ligDirection, normal); //反射ベクトルを計算
float t = max(0.0f, dot(refVec, toEye)); //反射ベクトルと視線ベクトル
float mask = tex2D(_SpecularTex, uv).r; //スペキュラマップをサンプリングし、mask値を取得
//mask = 1 - mask; //もしスペキュラマップの白黒が逆なら、maskを反転させるする
float3 specularLig = ligColor * mask * pow(t, _SpecularLevel); //ライトカラー、マスク、スペキュラレベルで最終的なカラーを計算
return specularLig;
}
ENDCG
}
}
}
まとめ
スペキュラマップを使った部分反射を実装しましたが、基本的な仕組みはどんなマップでも変わりません。tex2Dでサンプリングし、マスクにするなり、色を乗算するというステップを踏んでいくことになるでしょう。マップには、smoothness、metallic、emissionといろいろなマスクがありますので、それぞれの実装を実験してみてはいかがでしょうか。